
シトルリン血症の怖い病気のメカニズム。効果効能から分かった症状
シトルリンとはアミノ酸の一種で健康効果や精力向上効果が知られています。ただ、シトルリンが体内で過剰になると代謝異常を起こすシトルリン血症と呼ばれる症状を引き起こすのです。今回はシトルリン血症の原因や症状、治療法などについてまとめていきます。
目次
- シトルリン血症、その恐ろしさとは?
- シトルリンとは?
- シトルリン血症のメカニズム
- シトルリン血症の患者数について
- シトルリン血症の身体的症状
- シトルリン血症の精神的症状
- シトルリン血症が引き起こす生活への悪影響
- シトルリン血症の原因
- シトルリンの入った精力剤、サプリも原因に?
- シトルリン血症の対策・治療方法
- シトルリン血症への対策は万全に
シトルリン血症、その恐ろしさとは?

シトルリン血症とは、体内でシトルリンの濃度が高くなった結果、代謝異常や肝臓など臓器に悪影響を及ぼす病気です。新生児から成人までどの年代でも発症する可能性があり、一度症状がでてしまうと体内の機能が正常に働かなくなるため、日々の生活に支障をきたすなど大きな影響があります。ここでは、シトルリン血症の原因から症状、改善方法までをまとめてご紹介していきますよ♪


シトルリンとは?
シトルリンはアミノ酸という栄養の一種ですが、普段は聞き慣れない言葉ですよね。まずはシトルリンがどのような働きをする栄養素なのか、具体的にみていきましょう。
アミノ酸の一種
シトルリンとはアミノ酸の一種で、きゅうりやスイカなどの野菜に豊富に含まれています。タンパク質と結合していない遊離アミノ酸という分類になり、スーパーアミノ酸と呼ばれるほど、体にさまざまな良い作用をもたらすことがわかっているのです。体内に入るとアルギニンと呼ばれる成分に変換される際に一酸化炭素を作り出すため、排出するために血管を拡張して血液をたくさん流そうとします。そのため、血流促進によって体温上昇、老廃物のデトックス促進、肩こりやむくみの解消といった効果が期待できるのです。また、成長ホルモンの分泌を促し、骨や筋肉など細胞の修復や構築という役割も果たしています。
疲労回復効果がアスリートに人気
シトルリンは海外では昔からサプリメントとして利用されている成分です。血管を拡張するとともに強く丈夫にする働きも持つため、筋肉の繊維自体が太く強くなり、結果的に筋肉増強効果が見込まれています。また、筋肉の疲労によって作られたアンモニアを解毒分解し尿素に変える作用、疲労物質である乳酸を除去する作用もあるため、疲労回復や血行促進、運動量の増強などアスリートに最適な有効性も認められているのです。スポーツなどで体を酷使する人にとっては、パフォーマンスをあげるために有用であり、人気があります。
精力増強効果も
シトルリンは精力向上効果がある成分としても有名です。体内に入ったシトルリンは、一酸化炭素を生成しそれを追い出すために血流が良くなり、血流改善の影響が全身に及ぶため精力増強効果も期待できます。体自体が健康となって全身が元気になり、性欲が以前よりも増え勃起力も上がる、という流れからです。シトルリンだけで大きく太く成長できる、という単純なものではありませんが、血流が良くなることによる影響を少なからず受けるでしょう。
シトルリン血症のメカニズム
体に良い効果が注目されているシトルリンですが、シトルリン血症として発症するのはどんなメカニズムなのでしょうか。まずはシトルリン血症についてご説明していきます。
血中シトルリン濃度が上昇した状態
シトルリン血症とは、血液中のシトルリンの濃度が上昇した状態が続く疾病のことです。常染色体劣性遺伝と呼ばれる遺伝的な要素からも引き起こされる代謝異常疾患でもあります。シトルリンが体に良いからといって、大量に取り続けてしまうとシトルリン濃度が高くなってしまう可能性もあるということですね。
尿素回路の代謝異常によって発生する
シトルリンは体内で有害なアンモニアを尿素に変える経路、尿素回路が異常になることによって起こります。尿素回路は肝臓内にありますので、肝機能の悪化ということにもなりますね。これは、成人になってから発症する場合に見られるメカニズムですが、生まれた時すでに体内にある種類の遺伝子が欠損している場合、尿素回路が正常に機能しなくなるため、結果尿素回路の代謝異常が起こり、シトルリン血症を引き起こしてしまうことになるのです。
1型と2型の違い
シトルリン血症には、1型と2型の2つの形態があります。それぞれ原因や症状など細かな点が異なっており、1型は古典的シトルリン血症、2型はシトリン欠損症とも呼ばれますよ。
1型の古典的シトルリン血症は、アルギニノコハク酸合成酵素と呼ばれる尿素回路の酵素が、ある種の遺伝子の欠損といった何かしらの原因によって、機能することができなくなってしまった状態です。そのため、尿素回路が十分に働かずに、シトルリンやアンモニアの濃度が正常値よりも高くなってしまいます。古典的と呼ばれるように、新生児期など遺伝的な発症が多いですが、成人になってから発症する例も稀にあるようです。
一方シトリン欠損症と呼ばれる2型の方は、シトリンと呼ばれる遺伝子が、常染色体劣性遺伝と呼ばれる遺伝によって引き起こされる代謝異常疾患の一種です。こちらの場合は新生児期に発症する場合(NICCD)と、成人期に発症する場合(CTLN2)の2種類が異なる形で認められています。
シトルリン血症の患者数について
では実際にシトルリン血症と診断されている人はどのくらいいるものなのでしょうか。患者の数や種類についてご紹介していきますね。
53万人に1人の割合
シトルリン血症が発症し診断されている人は、53万人に1人。割合にすると、0.00000189%とごく低い確率なので珍しい症状だとも言えますね。
日本では6,000人前後が2型に
日本国内でのシトルリン血症の患者数は、2型が6,000人ほどだと推定されています。これは日本では17,000人にひとりで、世界的に見ると高い割合であることがわかりますね。ちなみに、中国の南部では6,400人に1人と日本よりも高い割合となっています。欧米の白人種は定かではないものの、日本や中国を含む東アジアよりかなり低いと言われているので、シトルリン血症患者数においては日本は上位だと言えるでしょう。
シトルリン血症の身体的症状
それでは次に、シトルリン血症によって引き起こされる体の症状についてまとめていきます。
食感異常や手のふるえ、けいれん
シトルリン血症の人には食べ物の偏りや癖が多く見られます。異常にピーナッツや大豆関連の食べ物を好み、スイーツやお菓子など甘いもの、アルコール類はめったに摂らない、といったものが一例です。また、手のふるえやけいれんが多く起こります。
高アンモニア血症
体内のアンモニア濃度が高くなる高アンモニア血症は、シトルリン血症と併発しやすい症状のひとつです。シトルリン血症の原因となる尿素回路の異常によって、アンモニアが体内で正常に分解解毒されていない状態が続きます。肝臓での分解機能が低下しているため、血液中にアンモニアが漏れてしまい、血液中のアンモニア濃度が上がってしまうのです。
高アルギニン血症
高アルギニン血症は常染色体劣性遺伝による疾患のひとつで、シトルリン血症と原因を共有しやすいものです。肝臓の尿素回路では、アンモニアから無害な尿素へと変換される一段階前のステップにて、アルギニンが発生します。そこで働く酵素であるアルギナーゼ1が障害によって、血液や尿の中のアルギニン濃度が上昇してしまうのです。それが高アルギニン血症と呼ばれる疾患であり、発症率は220万人に1人と報告されています。
易疲労感(いひろうかん)
シトルリン血症になると日常生活における動作にも影響が及びます。階段の昇り降り、道の歩行といった簡単な行動であっても疲労をすぐに感じてしまうのです。尿素回路がうまく働かないために体内で解毒が進まず、不要物が多いために体が動かしにくくなってしまいます。
その他、合併症による肝癌や膵炎など
シトルリン血症によって引き起こされる疾患には他にも、肝癌や肝不全、昏睡状態、膵炎といったものがあげられます。シトルリン血症である人がさらにシトルリンを多く摂ってしまった際にも、こうした合併症が表れる可能性が高いです。
シトルリン血症の精神的症状
シトルリン血症になった際にメンタル的に表れる症状には、どのようなものがあるのかをまとめてご説明していきます。
意識障害
シトルリン血症になった成人、特に20〜40代の人の多くには、意識障害が見られます。ぼーっとしていて何を考えているかわからないといった状態から、意識があるのかないのかわからないといった重症まで幅広く、普段の生活に支障をきたしがちです。
抑うつ症
気分的な落ち込みや、エネルギーの枯渇、感情や考えが悲観的な状態である抑うつ症もシトルリン血症にはよく見られます。うつ病の手前とはいえ、メンタル的に元気がなく毎日が楽しめなくなってしまった状態ですね。
てんかん
脳の慢性疾患であるてんかんも、シトルリン血症の症状のひとつです。特有の発作を繰り返し、全身に影響が及ぶものになります。
シトルリン血症が引き起こす生活への悪影響
ここまでみてきたシトルリン血症による身体的、精神的な症状によって、日々の生活にさまざまな支障が及ぶことになるのです。シトルリン血症がもたらす悪影響は次の3つにまとめられます。
身体異常により仕事ができなくなる
手のしびれやけいれん、ちょっとした行動でもすぐに疲れてしまって動けない、てんかんの発作といった症状から、職場へ出勤するような通常の仕事をすることが難しくなります。体が思うように動かず、エネルギーも長い間もたないため、会社勤めは厳しいかもしれません。
精神的症状により他人との関係が悪化
まわりの人から何を考えているか見えにくいといったメンタル的な症状から、人とのコミュニケーションが上手にできなくなってしまうでしょう。それによって、人間関係の構築がスムーズにいかなくなる可能性もあります。
最終的には生活の破たんも
体、そして精神におけるシトルリン血症の影響は、一人での生活はもとより、家族とであってもやりとりが難しく、日常生活を送ることですら困難になることも考えられます。結果として、生活が破綻してしまうかもしれません…。体内の一部の機能が不調なだけであっても、全身に支障をきたしてしまう恐れがあるのです。
シトルリン血症の原因
シトルリン血症の幅広い症状がわかったところで、そもそもの原因はどこにあるのか、確認していきましょう。
遺伝子の欠損
シトルリン血症の中でも1型に分類されるタイプの原因です。尿素回路を正常に機能させるためのある種の遺伝子が、生まれつき欠損しているために、シトルリン血症になってしまう場合があります。これは新生児や小児に見られることが多いです。
シトリンの劣性遺伝による代謝異常
シトルリン血症2型の原因となる、シトリン酵素が劣性遺伝のためにうまく作用できない状態です。シトルリンを正常に機能させることができず、尿素回路に支障をきたします。遺伝の異常ではありますが、新生児だけでなく成人でも発症する可能性があるので注意が必要です。
タンパク質の過剰摂取など劣悪な食習慣
タンパク質を過剰に摂取していると、体内でアンモニアに分解する流れが追いつかずに毒素がたまっていってしまいます。大豆製品やチーズ類の食べ過ぎや、糖分の過剰拒否といった極端な食事はリスクとなるのです。
シトルリンの入った精力剤、サプリも原因に?
シトルリンは精力向上効果があるとされ、男性用のサプリメントにも使われています。シトルリンの入ったサプリメントによって、シトルリン血症になってしまう可能性が気になるところですよね…。
影響が出るほど摂る必要は一切ない
シトルリンが精力剤としての効果を体感できる量は、1日あたり800mgといわれています。800mg以上摂取したとしても尿として排泄されてしまうため、たくさん摂る必要は全くありません。アルギニンよりも吸収率が高いので、大量に摂らなければ効かないというものでもないのです。
用法、用量を守っていれば大丈夫
過剰摂取することさえなければ、体に安全な成分だといえます。どんなに体に良いとされるものでも、容量を守らなければ体に害となってしまう可能性が高いので、適切に利用していきたいですね。


シトルリン血症の対策・治療方法
一度発症すると重い症状が引き起こされるシトルリン血症。悩まされる前に予防したいですよね。そのための対策方法や、万が一起こってしまった場合の治療法についてまとめました。参考にしてくださいね。
早寝早起き、ウォーキング
まずは規則正しい生活を送ることを意識しましょう。早寝早起きで睡眠時間をしっかりと取ることで体の疲労をすっきりと回復させることができます。また、普段運動をしていない人は軽く体を動かすことも大切です。体力に自信がなくてもウォーキングなど気軽にできるものから始めていきましょう。
喫煙、アルコールの過剰摂取をやめる
生活のベースを整えながら、健康に悪いとされる習慣は減らしていくことも重要です。タバコを吸う人は本数を減らすなどして喫煙の比率を減らすこと。また、お酒のアルコールによって肝臓を痛めやすいので飲み過ぎもNGです。
バランスのよい食生活
バランスの取れた食事を毎日意識していきましょう。糖質のとり過ぎはシトルリン血症予防に効果的ですが、全く摂らないとは逆効果です。また、タンパク質のとり過ぎは尿素回路に負担となりやすいため、過剰にならないように注意していきましょう。良質な脂質、タンパク質、少量の糖質のバランスを毎食意識できると良いですね。
ピルビン酸ナトリウムなどの投与
特に2型シトルリン血症の治療に、ピルビン酸ナトリウムや残余窒素排泄促進剤を投与することがあります。また、高アンモニア血症での対処療法を取る場合もあります。
肝移植
肝臓ごと移植する手術も治療の一貫として考えられますが、現時点では未だ確率されていないということです。
シトルリン血症への対策は万全に
あまり聞きなれないシトルリン血症ですが、一度発症すると日常生活にも影響が及ぶほどリスクの高い疾病です。精力向上用のサプリメントなどに入っているシトルリンに関係しているため、過剰摂取は絶対にNG!たくさん飲んでも意味がないので、容量を守って使うようにしてくださいね。シトルリン血症にならないよう、事前に対策をしておきましょう!